21_21 DESIGN SIGHTにおける未来の水筒のコンセプトの展示
Takramは2014年10月24日から2015年2月1日まで21_21 DESIGN SIGHTにて開催された企画展「活動のデザインTHE FAB MIND」に参加しました。本展示は、社会が抱える課題を読み解き、それを解決に導く活動を、デザインの文脈から提示するものです。10ヶ国以上から招聘された24組のクリエーターは、俯瞰的な視点やクリティカルな視点など、様々な切り口から社会を見つめ、新たな価値を提案しました。
「Shenu:Hydrolemic System」は、人体が必要とする水分を極限まで抑えることのできる人工臓器のプロトタイプです。2012年に開催された国際現代芸術展「dOCUMENTA(13)」(ドイツ)にて最初に発表されました。shenuは「100年後の荒廃した世界において人が使用しているであろう水筒」のデザインについての依頼を受け、Takramが製作したコンセプト作品です。今回はその作品に新たなリサーチ、映像、音楽、彫刻的什器を加えることで、身体-水-人工臓器の関係を表現しています。 「100年後の荒廃した世界」というシナリオは、2012年当時の展示ディレクターから提示されたもので、人間の根源的な価値観や究極的な美意識をテーマに据えたグループ展示のテーマに基づいています。このシナリオの中では、地球環境は破壊され、芸術や文化といった文明的な営みはおろか、都市インフラの整った生活そのものが過去のものとされています。そのような極限の環境設定における「究極の水筒」が当初Takramに課せられたテーマでした。「水筒」、ひいては「水」そのものについて考えることで、人間にとって本当に必要なものは何か、という根源的な問題に迫りました。
「100年後の荒廃した世界」の時代背景、および6つの人口臓器の仕組みを表現した、ミニマルでありながら幻想的なビジュアル&サウンドによる映像。来場者を、今日の世界とは異なる未来の世界へと誘います。
人体の約66%が水分であること可視化し、その水分が人工臓器によって保存、補給、再利用される仕組みを視覚的に伝えます。人型の凹みに水を張り、それぞれの人工臓器が担う水分量を可視化しています。
Prototyping
多数のスケッチから始まり、形状確認のためのダーティ・プロトタイプを多数製作しながら、機能性やスケールについて試行錯誤を繰り返しました。また同時並行で、3D CAD上で内部構造や人体との整合性の検証を行いました。
Storyweaving
一連の人工臓器の設計は、砂漠地帯に生息する動物の呼吸構造や、哺乳類の発汗に頼らない体温調整の仕組みなどのリサーチから生み出されたものです。人工臓器が可能にする水の体内循環を「錬水術」として捉え、賢者の石に見立てた水分補給用の飴玉や、ウロボロスに見立てたロゴマークをデザインしました。
Problem Reframing
プロジェクトを進める過程で「未来の水筒」というテーマを「水を体内循環させる人工臓器」というアウトプットに再定義しました。「水筒」という形式的制約から一度距離を置き、水と人体の関係そのものを捉え直すことで問題の抽象度を上げています。この「プロブレム・リフレーミング」と呼ばれるTakram独自の手法により、発想の飛躍を生み出しています。そもそも人体がなぜ毎日2Lの水を必要とするのか、仮に体内で水の浄化、循環、再利用が可能であれば、摂取する水分量をどれだけ抑えられるのか。このような問いに答えるために、医学、生物学、工学、哲学、歴史など多くの領域を横断し、リサーチと仮説の構築を繰り返しました。
Kaz Yoneda (ex-Takram)
Yuko Ishizu (ex-Takram)
,Yuki Shinohara (ex-Takram)
Motohide Hatanaka (ex-Takram)
Taro Peter Little
Moon Kyungwon and Leon Joonho, Artists from South Korea
“THE FAB MIND” 2014-2015 at 21_21 DESIGN SIGHT, Tokyo