現代のオーディオ文化に寄り添ったリブランディング
Takramは、株式会社J-WAVEのリブランディングを担当し、ミッションやバリュー、VIといったブランドアイデンティティ全体の刷新をサポートしました。J-WAVE社内のチームとともにこれから取り組むべきことを考え、「東京の生活者」や「音楽」、「情報発信だけでない行動」といった“J-WAVEらしさ”を改めて言語化し、ブランドアイデンティティを構築しました。
音にまつわる生活スタイルは、今日劇的な変化を続けています。スマートスピーカー、各種音声サービスやポッドキャスト……。ラジオ局のアイデンティティである「声を届ける活動」が、多くの人に開かれる時代になりました。また、多様な価値観が集い、日々新たな文化が醸成される東京で、「東京ローカル」のメディアとしてどのような姿勢でありたいか。J-WAVEは今、これから目指す姿を再考すべき局面にあります。
プロジェクトの初期フェーズでは、J-WAVEの経営層や従業員、緊密なコラボレーターや外部有識者へのヒアリングと意見交換、および従業員に向けた複数回のアンケートを実施しました。今後ラジオや音声メディアが果たす役割、近い将来に東京が辿であろう文化の変遷、課題や意志等をテーマに声を集めました。またロゴリデザインに向け、リデザイン前のロゴの設計や当時のデザイン潮流などを分析し、意志を汲み取るグラフィックデザイン上の調査を行いました。リサーチの内容は都度記事に起こし、ブランディング活動の内容を共有するために開設した社内ブログに掲載しました。
リサーチやその後の議論を経て、J-WAVEの意志の言語化を行いました。「声と音楽と行動で、多様な東京の風景をつくる。」ミッション前半部分は、J-WAVEのアイデンティティである「声と音楽」に加え、情報伝達に終始せず、リスナーの「行動」を引き起こすための魅力的な補助線を設計する、というJ-WAVEの思想を表現しています。後半は、東京と世界の多様な価値観に耳を澄ませ、J-WAVEコミュニティとともに東京の風景をつくっていく、という志を表しました。
タグライン “for the Unique and Universal” は、まだ世に知られていないUniqueなものにもUniversalな価値を見出し、誰もが知っているUniversalなものに未だかつてないUniqueな見方を取り入れるという、J-WAVEの姿勢の宣言です。単体での使用の他、冒頭に名詞を挿入し番組やイベントごとにアレンジも可能です。例えば”A stage for the Unique and Universal”など、場面にあった表現を作ったり、ジングルなどに活用したりできます。
J-WAVEのロゴデザインは、これまでに大きく2つのデザインがあり、一つは、1987年のJ-WAVE 開局時に制作されたデザイン、もう一つは、約25年ほど前に制作され、去年まで使用されていたデザインです。
社内で使われているロゴのマスターデータを詳しく見てみると、文字ごとの線の歪みや太さのばらつきなどがあり、データとして不完全な状態でした。また当時のロゴガイドラインには、現在頻繁に使われている丸アイコンのJマークが含まれておらずロゴバリエーションの定義もされていないことから、今日の様々なメディアでの表示に耐えうる柔軟なデザインの必要性が改めて確認されました。
前述のリサーチの他、現在のロゴやロゴが作成された当時のデザイン潮流などを分析する調査も行いました。当時の意志を汲み取るグラフィックデザイン上の調査です。
リデザイン前の力強い線は保ちつつ、囲いを取り除き、枠に囚われずより未来に向けて挑戦していく態度を表明するデザインを模索しました。完成した新ロゴは、20年以上親しまれていたJ-WAVEロゴが持つユニークさも持ち合わせながら、新しいJ-WAVEの意志を反映したものとなりました。また、SNSアイコンや各種デザインアプリケーションにも対応できる幅広いロゴデザインのバリエーションを定義し、様々なシーンでも統一的なブランドイメージを保つことができるVIを構築しました。
完成した新ロゴのデザインとともに、番組のプレゼントで用いられるシールやペン等各種グッズや、名刺、紙袋などデザインアプリケーションにもVIを適用し展開しました。また、会社の受付エリアのロゴだけでなく、収録に訪れたアーティストがSNS用に撮影するためのバックスクリーンにも新しいロゴデザインを反映しています。
また、関係者向けにJ-WAVEの新しいロゴをいち早くアナウンスする機会となった2020年の年賀状のデザインも担当しました。“New Year, New J-WAVE”というコピーと新年のご来光の陽をイメージしたグラフィックによって新しい会社の姿をシンプルに表現しました。
Mai Tsunoo
Kaz Yoneda (Bureau 0-1)