とらやと取り組む、未来のお菓子づくり
480年の歴史と伝統を受け継ぎながら、革新的な発想で常に新しい和菓子を提供し続ける「とらや」。老舗中の老舗の和菓子職人とTakramのデザインエンジニアであり、同時にifs未来研究所の外部研究員でもある渡邉康太郎が、未来のお菓子づくりに臨みました。
朝起きてから夜眠るまで、一日の決まった時間に頂く、五つの和菓子「ひとひ」。
和菓子は生活に彩りを与える「嗜好品」の一種ですが、今回はこれを日々の生活に馴染む「必需品」に少しだけ近づけるため、機能的な側面を持たせています。それぞれに、一日の中でその時間帯に摂取すると望ましい素材や栄養素が含まれています。また元来は「一年の四季の移ろい」を表現するところを、今回は日の出から月夜までの「一日の光の移ろい」を、形と色彩で表現しました。一日のあいだに必要な食べ物を、必要な時にー。
一日のはじまりに。雲の奥から覗く朝日の淡い光をイメージしています。外は白い餅米の生地、中は白餡を紅く染めたものです。手に取って千切りながらお楽しみ下さい。お菓子の糖分とあわせて、朝食でミネラルなどの各種栄養素をとることで、その日必要な脳の神経伝達物質が作られます。
午前中に。朝と昼をつなぐ優しい光を、赤と緑のグラデーションで表現しています。昔ながらの飴のように、白ザラメと水飴でできています。昼食前に適度に胃を刺激し、仕事や勉強を続けるためのエネルギーを作ります。
お昼過ぎに。真昼の木漏れ日をモチーフにしています。上は白いあわゆき、下は透明の琥珀羹でできたお菓子です。見る角度や切り口によって、透明にも緑色にも映る、涼やかな佇まいがあります。昼食の後、間食に適度な糖分をとると、眠気を覚ますことができます。
夕暮れ時に。沈む夕陽が照らす雲の幾重もの連なりを表現しています。橙、黄、桃と移り変わる夕焼けをイメージして、生姜味のカルメラを作りました。仕事や勉強の締めくくりに向け、スパイ シーな香りが体を温めます。夕食時の急激な血糖値上昇を避けることは、肥満の予防に繋がるといわれています。
夕食後のデザートに。新月の周りから僅かに漏れる仄かな光の風景です。かつて谷崎潤一郎は、羊羹を「暗黒が一箇の甘い塊」になったものと表現しました。この羊羹もまた、夜闇を凝縮した球体です。アニスの香りにはリラックス効果があるといわれており、一日の締めくくりを、心地よい眠りへと誘います。
Hitohi was realized as a collaborative project between Toraya Confectionery Co., Ltd. and ifs Future Laboratory.
Toraya Confectionery Co. Ltd.
Shoryu Hatoba
KAMI NO KOSAKUJO
Takashi Mochizuki
,Yosuke Suzuki (erz)
Yoko Kawashima