Lemon Hotel

VI and sound design for an artwork at Setouchi Triennale, 2016

「2人でカップルになりなさい。相手がいない場合は、現れるまでしばし待つ。」

このような指示に従って、檸檬ホテルを体験します。ここには、平面や立体の作品はありません。作品があるとすれば、それは鑑賞者の胸の中で、少しざわついた、遠い記憶のような何かです。

檸檬ホテルは作品であるが、1日1組、宿泊ができる。宿泊者には、レモンを効かせた新鮮な島の料理が用意される。翌朝、豊島レモンで草木染めされた布の、淡く黄色い光りのなかで、目覚めるのです。

瀬戸内国際芸術祭にスマイルズが出品したのは、豊島・唐櫃岡にある空家を改装した「檸檬ホテル」という施設。日中は館内全体が作品として閲覧でき、夜は一組だけが実際に宿泊できます。Takramは、この作品のシンボルマークデザイン、ウェブサイトのグラフィックデザインと写真、ウェブサイトのデザインディレクションを担当しました。また、作品鑑賞で用いられるオーディオガイドのテクニカルディレクションとテスト録音補助も行いました。

レモン色に染められた布と、その光が射す部屋は、遠山氏自身の幼少期の記憶が元にあるそうです。「檸檬ホテル」はコンセプトよりも語感が先行し、思いつくが早いか、数年前から商標だけ登録しておいたとのこと。その頃から、いつか「檸檬ホテル」の名を冠したホテルを始めたい、という思いがありました。また、今回ホテルの支配人に就任した酒井氏は、もともとスマイルズに勤めていた社員だったが、食を通した仕事によって独立したいという考えを持っていた。遠山氏からの提案を受け、埼玉の自宅を売り、妻・犬とともに豊島への移住と檸檬ホテルでの仕事を決めたといいます。スマイルズという企業の志向するアートプロジェクトへの取り組みと、その元社員という一個人が希求していた食を通したホスピタリティの取り組みが重なり、この特異なホテルの姿に結実しました。

これらの全てが、ある種の「甘酸っぱさ」を伴う記憶からなります。純粋であること、甘酸っぱいことが伝わるようなシンボルができれば、という考えから、数多くの試作とスマイルズメンバーとの協議を通して、檸檬のモチーフと、Pure & Sour という文字があしらわれたマークが完成しました。

豊島という場所や関わる人の醸すストーリー、文脈をつぶさに感じ、それをあるシンボルに結実・結晶化するグラフィックデザインの取り組み。体験型作品の鑑賞や滞在という、来場者の主体的な「実感」を通して、このグラフィックの意味が世界に開かれ、新たな文脈を蓄積する器になることを願います。実際に、 #ほほ檸檬しなさい 、 #cheekylemon といったハッシュタグを通して、日々来場者なりの作品への応答が世に開かれています。

CREDIT

Client: Smiles Co., Ltd.
Creative Direction: Kotaro Watanabe (Takram)
Graphic Design: Kotaro Yamaguchi, Tomomi Maezawa and Maki Ota (Takram)
Web Design & Photography: Kotaro Yamaguchi and Terushige Enatsu (Takram)
Sound Design: Keisuke Oyama (Takram)

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