経済産業省のためのビッグデータビジュアライゼーションシステムのプロトタイピング
このプロジェクトは、2015年4月21日に公開された経済産業省の地域経済分析システム「RESAS」(日本経済にまつわる膨大なビッグデータを表示するためのシステム)のプロトタイピングを行ったものです。大規模な経済データを分かりやすく、そして美しく表現するために、このプロトタイプでは数多くの先進的可視化手法が考案され、テストされました。その結果、多様で一見把握の難しい情報が、3D空間の中に美しいビジュアルとして展開されるデザイン・機能が構築されました。このプロジェクトは、日本政府がソフトウェアシステムを構築する際に、プロトタイプを本格的に活用する初めての先進的事例となりました。また、このプロジェクトは、その先進性が評価され、2015年グッドデザイン金賞(大賞候補)を受賞しました。
「RESAS」は国の経済ビッグデータを表示するシステムとしては世界最大級のもので、先端的な取り組みとして評価されています。この複雑なシステムの設計とデザインを短い時間の中で完成させるためには、プロトタイプによる試行錯誤による精度の高い仮説検証が必須でした。
Takramはこのプロトタイピングを通して、 設計とデザインのコンセプトを導き出すことに挑戦しました。 日本の経済、とりわけ地域経済は、人口減少等による厳しい構造問題を抱えています。中小企業・小規模事業者等の数が年々減少している中で、地域経済と中小企業は表裏一体の関係にあり、経済活性のために地域経済の活性は必須課題となっています。こうした課題に対し、全国規模の多様なデータの分析や可視化が、中小企業に対してより確度の高い支援を可能とし、地域経済の発展に貢献できることを、プロトタイプを通じて提案しました。
ビッグデータを表現する上で、棒グラフ・円グラフ・折れ線グラフといった既存の手法に加えて、地図上での3D表示や、時間軸の設定などを実装しました。大まかな全体イメージを捉えなから、シームレスに詳細部分に踏み込んでいくようなビジュアライゼーションを目指しました。全体と部分、抽象と具体といった、2つの異なる視点の間をスムーズに往来できるシステムとするために、プロトタイプでは、画面を大きく左右に分割し、左には地図の上にデータの全体像を、右にはデータの一覧やグラフといった詳細情報を配置しました。右脳的な把握と左脳的な理解の間を、高速に行き来できるような仕組みとなっています。これによりユーザーが目的を持って情報を探したり、逆に全体を俯瞰する中から、ふと、気づきを得たりすることができるようになっています。このように、様々な側面から膨大なデータにアクセスできる方法がプロトタイプとして実現されました。 様々なデータを美しいグラフィックとして可視化する試みは昨今、インフォグラフィックスとして数多く提案されるようになりました。中でもビッグデータは、その情報の膨大さから全てをロジカルに把握することが難しく、可視化が全体を捉える手段として重要な役割を担っています。本プロトタイプでは、地域経済活性化というシリアスな問題に対して、データの可視化技術やデザインが大きな貢献を果たし得ることを示しています。
このプロジェクトは2015年のグッドデザイン大賞候補となり、結果としてグッドデザイン金賞を受賞しました。
The Small and Medium Enterprise Agency (Japan)
,Cabinet Secretariat (Japan)
TEIKOKU DATABANK, LTD.
,Takram
Hironobu Kimura(ex-Takram)