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Artwork with water-repellent effect exhibited at 21_21 DESIGN SIGHT, 2007

超撥水加工を施された12枚の紙皿。その上で転がる水滴。ありふれた存在であるはずの水は、紙皿の上でまるで命を得たかのように、思いもよらない動きを見せます。時には尾を振りながら歩く不思議な動物のように、また時には分裂を繰り返すアメーバのように、また時にはせわしなく競技場を転がるサッカーボールのように。 「ふるまい」はその語のなかに、振(behavior) と舞(dance)ということばを含んでいます。これは、社会生活を営む上での行動(振)と、遊び心のあるうごき(舞)といった両面を表しています。本作品を通じて、Takramは水の貴重さ、純粋さと、このような「ふるまい」という言葉の持つ二面性をそれぞれ表現しています。水滴は、紙皿の上に辿り着いた瞬間新しい生命を授かり、自由自在に転がりながら、私たちを楽しませてくれます。海、雨、涙といった形で、日常生活のありとあらゆる場面に存在する水。「ふるまい」と触れ合うことを通して、多くの人が水の新たな側面や意味、また普段とは異なる解釈をの心に浮かべることができればー。Takramはそのように考えています。

構成

筐体は下から順に、土台のコンクリート、金属製の支柱、木の器、そして皿本体から構成されています。地面に接しているコンクリート部分の高さは300mm。この土台は、小さなこどもが登るための踏み台としても機能します。土台の上からは900mmの金属製の支柱がのびています。太さは5mmほどで、しなやかに傾けることで、お皿全体の角度を変え、水滴の動きを操ることができます。本体は、実は使い捨ての紙皿を素材として用いていますが、耐久性を高めるため木の器によりお皿全体の構造を補強しています。またこの重さが振幅運動に惰性を与えています。

お皿を自由に持ち運べる形にせず、敢えて土台に固定させたのには、ある程度の「公共性」を持たせる意図があります。ほかの人が遊んでいるときも、横からのぞき見て一緒に楽しむことができる仕組みです。壁には、子どもが実際に土台の上に乗りながら、お皿で遊んでいる様子が描いてあります。佐藤卓氏によるデザインのこのシルエットは、作品の使い方を明確に表しています。

テクノロジー

本作品は、お皿の上を動き回る水の面白さを際立たせるため、水をはじく「超撥水加工」という技術を用いています。表面に微粒子を塗布することで、水滴を「立ち上がらせる」ことができ、水滴はお皿の上を滑るように動き回ります。スキーウェアに吹き付ける撥水スプレーの、特に強力な素材を表面に塗布しているようなイメージです。このような加工が、水本来が持つ「凝縮力」や「表面張力」を最大限に引き出しています。

コンセプト

12枚のお皿は、水のための遊び場、ステージです。着目すべきは、一つひとつのお皿自体ではなく、それが際立たせる水滴の表情です。この作品は、人が触れることによって初めて意味を持つものです。それぞれのお皿の上には、異なったデザインが施されています。抽象的で幾何学的な模様から、具体的なモチーフを象ったものまで - そして非常に大きなスケールを思わせる形状から、ミクロの世界を彷彿とさせるものまで。様々なステージの上で同じ一粒の水滴が全く異なる振る舞い、場面、躍動感を映し出すことは、多くの人の目に新鮮に映るでしょう。水は、とりどりのお皿の上を滑りながら、時には尾を振りながら歩く動物のように、または細かく振動するスピーカーのように、また分裂するアメーバのように、多種多様に振る舞います。自在に姿や動きを変える水滴は、まるでステージの上で自由にダンスを演じるこどものようです。

一枚のお皿を作るため、最高25程度の作業工程(下地処理、撥水処理、部品の造形、塗料の塗布、印刷、転写、コーティング、ヤスリがけなど)を踏み、水の動きを最も美しく際立たせるステージ、水本来の魅力を引き出すステージを完成させました。海や雨粒、水道水や涙まで、常に我々の周りを取り囲んでいる「水」-私たちは、それを普段から身近にあり、ありふれたものだと思いがちです。来場者の方々には、この作品の体験を通して、偏在する水の不思議さ、有り難さを、改めて見つめ直すきっかけにしていただければ幸いです。

背景

佐藤卓氏と竹村真一氏の監督のもと、クリエイティブチームとともにこの展示会の準備を進めてきました。展示会開始の半年ほど前に、水と触れ合う遊びにはどのようなものがあるかを皆さんに紹介するため、ワークショップを催しました。そのときお見せした中の一案が、超撥水皿でした。そこで佐藤氏が、お皿本体に加え、土台と細い支柱を含めた構成を提案されました。最終的には、土台部分のデザイン、壁のグラフィックは佐藤さんが担当され、それぞれのお皿のデザインを含む支柱より上の部分は、Takramが担当しました。

舞台裏

半年の開発期間のなかで、裕に300を超える試作品を製作しましたが、会場に展示されている12枚のお皿は、その中から丹念に検討した選りすぐりのものです。水の特徴的な動き・振る舞いを引き出すのに適した造形とは、どのようなものか。その問いに答えるため、1mm以下の単位で寸法を調整しながらバリエーションを作ったり、同じ形状を異なる素材で作り比較するなどしながら、最適な表現、形状、サイズを吟味しました。そして、そのような一つひとつの気が遠くなるような試作作業自体が、普段見慣れているはずの水の美しさや面白さを再発見するための、学び・遊びのプロセスでもありました。皆様にも同様に、この作品を体験することが、身の回りに偏在する水の不思議さ、ありがたさなどについて再考するきっかけになればと思います。

CREDIT

Project Management & Design Engineering: Kotaro Watanabe (Takram)
Design Engineering: Motohide Hatanaka (ex-Takram), Kinya Tagawa (Takram)
Exhibition:waterexhibition 2007-2008 at 21_21 DESIGN SIGHT, Tokyo

© 2007 water project

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