誰もがアクセスできるウェブを設計・運用するための初心者向けガイドブック制作
「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を。」の実現をめざすデジタル庁は、継続的に「ウェブアクセシビリティ」の向上に取り組んでいます。Takramは、デジタル庁の対外的な施策の一つとして、初めてウェブアクセシビリティに取り組む行政官や事業者、そして一般の方々に向けて、その考え方や取り組み方のポイントをまとめた「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」の制作をサポートしました。
デジタル技術の進展により、これまでできなかったことができるようになり、障がい者や高齢者、外国人といった人たちを取り巻く情報環境や支援技術は劇的に変化しています。公的機関のウェブサイトはもちろん、あらゆるウェブサービスにおけるウェブアクセシビリティの重要性は高まり続けています。
「ウェブアクセシビリティ」とは、年齢や、視覚・聴覚・身体・認知など利用者の障害の有無やその程度、さらにはデバイス、通信環境にかかわらず、誰もが支障なく利用できること、またはその到達度を表します。特に行政手続きや災害時の避難情報などの社会生活に影響のある情報を扱う公的機関のウェブサイトの運用には、欠かせない観点です。「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を。」をミッションとするデジタル庁は、行政のウェブサイトや情報システムを多様なユーザーが利用しやすい状態があるべき姿だと考えています。
その一方で、W3C(World Wide Web Consortium)が定めた国際規格のガイドラインや、それをベースとした日本語版のウェブアクセシビリティ規格があるものの、初心者にとってはハードルが高く、「ウェブアクセシビリティは難解」と思われている現実もあります。
今回、Takramが制作をサポートした「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」は、読者のターゲットを行政の情報システムを開発する担当者や情報発信に関わる広報担当者、受託先となる事業者を対象とし、まずは初心者が入りやすくするための門をつくることに注力しました。そのため、既存のガイドラインや実践プロセスの全てを説明することはせず、最低限知ってもらいたいコアに絞り込んだ内容になっています。
「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」は、デジタル庁のウェブアクセシビリティチームが内部向けに作成した内容をベースに、Takramが目次の作成からテキストの編集、ダイアグラムや具体例のビジュアル検討、装幀やグラフィックデザインなどのデザインディレクションを行い、外部向けに再編集しました。
ウェブアクセシビリティ導入ガイドブックは、ガイドブック自体のアクセシビリティ ── 特に視覚や聴覚の認知特性に対して ── に高い水準で対応したものになっています。
例えば、全盲の人も同じように情報を得られるスクリーンリーダー対応、具体的には「全盲の人でもすべての画像が理解できるよう代替テキストの埋め込み」をはじめ、「込み入ったレイアウトでも理解しやすい順序で読み上げ」「読みたい箇所に素早くジャンプできるように、見出しにタグ付け」など、本来伝えたいフォーマットが正しく伝わるようにデザインしています。結果として、デジタル庁に勤める全盲のスタッフからもここまで丁寧に作られたドキュメントは初めてというフィードバックをいただく内容に仕上がりました。
ウェブアクセシビリティは、デジタル庁に限らず、今後さまざまな局面で求められるようになっていきます。Takramとしても、ここがゴールではなくスタートとして、よりわかりやすい情報設計を通して、ウェブアクセシビリティが社会に浸透していくための取り組みを続けていきたいと考えています。
ガイドブックのPDFはスクリーンリーダーに最適化し、音声読み上げでも同等の情報を得られるよう配慮した
全ての図表に代替テキストを設定。推奨するアクセシビリティ対応をガイドブック自体が実践している
Minoru Ito (Takram)
Keisuke Kambara (Takram)
Yosuke Nakanishi (STUDIO PT.)
Yosuke Nakanishi (STUDIO PT.), Koharu Nezu (STUDIO PT.)
Rei Yamamoto (freee)